ホラー映画好きの二人の青年とゾンビの女性とのラブストーリーを描く、一本道の短編ノベルゲーム。青年は絶体絶命の危機を「ヤツら」の姿をした女性に救われる
「After Dead」は、「ヤツら」が蔓延する“終わった世界”を舞台にした、ちょっと切ないラブストーリー。人死にや若干のグロテスクな表現はあるものの、淡く切ない男女三人の青春(?)物語を楽しむことができる。三人が迎える結末は……。
舞台は、突如「ヤツら」が現実のものとなり、人間を襲うようになってしまった日本。「ヤツら」とは、もとは人でありながら、死してなお動き、人を襲う、映画などで有名な「人ならざる者」のことだ。
物語は、主人公であり、かつ語り手でもある青年が「ヤツら」に襲われ、逃げ回るところからはじまる。幸い「ヤツら」は動きが遅く、走ることもない。何とか逃げ続けることができていたが、捕まって噛まれてしまえば「ヤツら」の仲間入り。実際、青年の周囲でも人々が次々と餌食になっていた。
しかし、青年には確実に安全な避難場所のあてがあった。この場を逃げ切ることさえできればなんとかなる──そのことを頼りに、戦いながら逃げ続けていたが、痛恨のミスにより絶体絶命の危機に追い詰められてしまう。青年が彼女とはじめて出会ったのはそんなときだった……。
ヒロインに対する反応の違いがやがて事態を動かしてゆく
ゲームの主人公は「山瀬 和彦」。昔から「そういう」映画が好きで、週末になるとポテトチップス片手に鑑賞していたため、「ヤツら」に対する知識は人一倍ある。事態が発生する前は営業職の社会人。イケメンで女性にもモテたが、無愛想で女心がわからず、思ったことをそのまま言ってしまう性格のため、あまり長続きはしなかった。
「貞金 夏」は、小太りでメガネをかけた、人のよさそうな青年。フリーターだが、親の遺産のおかげでお金には困っていない。和彦とはホラー映画好きの仲間で、高校時代からの付き合い。「ヤツら」対策が念入りに施された、コンクリート剥き出しの、シェルターのような家を建てて住んでいる。
「カナ」は、顔の右半分と左肩から肉を露出させ、そこかしこが変色した二十歳前後の「ヤツら」の女性。「ヤツら」であるにもかかわらず言葉を話すことができ、立ち居振る舞いは人間そのもの。なぜか「ヤツら」を従える能力を持ち、危機に陥っていた和彦を助けてくれる。
「花田」は少し腹の出た、ごくごく一般的な風貌の中年男性。少し先の街でデパートに逃げ込んだ、生き残りたちのリーダー的存在。
「由香」は、小学校低学年くらいの年齢の、花田の一人娘。母親を亡くして以来、塞ぎがちだったが、なぜかカナに懐き、明るさを取り戻しはじめる。
「川岸」は、花田たちのグループの、いかにもヤンキーな青年。人一倍「ヤツら」への憎しみが強い。討伐グループの若者たちの中心的な存在。
これらのキャラが中心となり、「ヤツら」によって終わった世界の物語が語られてゆく。