ご存知のように世間では、ようやく4Kテレビや4Kディスプレイ、あるいは4Kビデオカメラなどが登場しはじめたばかり。それなのにもう8Kとはずいぶんと気が早い話だと思うかもしれないが、実のところいまのフルHD(2K)から4Kでは、進歩の幅はそれほど大きくない。NHKなどでも次世代の放送は8Kが本命と位置付けていることもあり、8Kへの移行は案外遠くない未来の話なのかもしれない。しかし8K解像度は、いまのフルHD解像度の16倍の情報量だ。となると、動画コーデックもこれまでのH.264から、より効率のよい規格への移行が求められる。そこで使われるのが「H.265/HEVC」というわけだ。ちょうどSD解像度からHD解像度への移行により、MPEG-1/2からH.264/AVCへと移行が進んだのに似ている。
要は、8K解像度に対応するには、コーデックとしてH.265/HEVCに対応するのもまた必須だということ。「TMPGEnc Video Mastering Works 6」で8Kのファイル出力が行えるのは、コーデックとしてH.265/HEVCを選んだときだけ、というのはこうした事情も関連している。
ただし、「H.264に比べて同じ画質なら圧縮率が倍」というH.265/HEVCのメリットは、何も高解像度の場合だけにとどまらない。ファイルを保管する際のディスクスペースの節約にも役に立つ。圧縮率が倍なら、同じ画質でファイルサイズが半分ですむ。特に、記憶容量に制限があるスマートフォンなどに動画を転送して視聴する場合、このメリットは大きい。最近のNTTドコモの一部機種には、再生コーデックとしてH.265/HEVCに対応しているものもあり、こうした機種用の動画を作成する場合には魅力的だ。
(天野 司)