オタク系のネタが“これでもか”というくらいに詰め込まれた、楽しい短編RPG。ネタの範囲もゲーム、アニメ、ラノベからパソコン、ネット上に流れるもの、一般常識(?)などまで、実に幅広い。ネタの出し方にも力が入っている。友人の「アリス」や「モブ」との会話、敵の画像などといった一般的なところはもちろん、セーブ/ロード画面やダンジョンの背景、そのほか細部に至るまで、ありとあらゆるところに笑いのネタが散りばめられており、感心させられた。
パーティメンバーは主人公「ヒンメル」ただひとりだが、要所要所に強引に割り込んでくる「アリス」の存在が物語のアクセントになっており、単調さを感じさせない(戦闘に関しては後半、若干単調に感じられたが、やむを得ないところか)。
オタネタ満載でストーリーそのものもベタといえばベタ。一歩間違えればウザくなる危険もはらんでいるが、会話の台詞や画面のデザイン、システムなど、至るところにセンスのよさが光り、最後まで笑い続けながら愉快にプレイできた。強いて要望を挙げれば、オマケの「ダンジョン精霊の家」にも何かイベントの一つや二つ、あるいは裏話がほしかったなといったことぐらいだろうか。
基本的に「ノリと勢いでオタクネタを楽しむゲーム」なので、プレイする人を多少は選ぶかもしれない。しかし、そうしたノリが嫌いでなければ、ぜひ一度プレイしてみていただきたい。画面を見ているだけでも楽しめるはずだ。
(秋山 俊)