ソフトを開発しようと思った動機、背景
自作品のオリジナル同人小説をイベントで頒布するために開発したスクリプトが、このソフトのもととなっています。いまでこそオンデマンド印刷などがあるため、文庫サイズの小説本を印刷所に頼むことも難しくありませんが、私が活動をはじめた当初はまだまだ印刷代が高く、ページ数が多い本を頼もうとすると、それなりの費用が掛かる頃でした。また当時は本を作るためのワープロソフトやDTPソフトを所持していなかったため、組版システムの「TeX」を使うという方法も考えましたが、記述があまりにも複雑かつ煩雑であり、縦書き組版だけを目的とするならばオーバースペックでしたので、こちらも見送ることに。
また、手製本を行うにしてもA6(文庫の紙面サイズ)の用紙の入手方法がわからなかったことから、A4用紙両面に8ページを構成して、それを切り貼りすることで文庫本を作るソフトを開発しようと思い至ったことがはじまりとなります。小説本を作るにあたっては、単に縦書きを実現するだけでなく、句読点の禁則処理やルビの指定や挿絵の組み込みができなければならないので、当初からこれら機能を実装していました。
最初の頃はPDFではなくPostScriptを出力するプログラムとなっており、その出力をAdobe Acrobatにて変換を行うことでPDFを得る方式でしたが、その後、PDF出力を行えるライブラリを組み込んだことで、単独でPDFが得られるようになり、Windows向けのGUIを取り付けたものがこの「威沙(いずな)」となります(なお、当時はタグフォーマットであるTNFのみサポートしており、テキストファイルベースのPreTNFはかなり経ってから実装しました)。
開発中に苦労した点
開発言語が「Perl」ということもあり、これをGUI付きのWindowsアプリケーションとして実装するのが難しく、意図通りに動かないことがしばしばありました。
ユーザにお勧めする使い方
「良きに計らえ」をコンセプトで開発していますので、プレーンなテキストファイルをそのまま指定するだけで、頒布向けの縦書き組版されたPDFファイルが得られるようにしています。
また、ライトノベルでは頻繁に使用される「ルビ」については、「威沙」独自のルビ指定のみならず、「小説家になろう」や「カクヨム」のルビ指定方式にも対応していますので、ルビを多用する方には便利に使えるのではないかと思います。
また、コマンドライン版(Izuna_cmd.exe)も同梱していますので、好みのエディタと組み合わせて使用することで、クリックひとつで縦書きPDFを得るということも可能です。
中表紙や奥付けなどのデザインは「テンプレート」機能で実現しており、自分でカスタマイズすることも可能です。実際にカスタマイズしたテンプレートを公開している方もいらっしゃいます。
今後のバージョンアップ予定
プロファイル(組版パラメータ)以外の設定情報を「動作設定」として保存できる機能の追加を考えております。また、遅れがちなリファレンスマニュアルなどのドキュメントについて改版を進めてゆく方針です。
(風野旅人)