ソフトを開発しようと思った動機、背景
数値解析やシミュレーションでは、さまざまなOSが使用されます。解析ツールもさまざまなものがありますが、異なるOS間では移植されていなかったり、されていても導入に手間がかかったり、移植元よりも微妙に使いづらかったりする場合があります。もう何年も前になりますが、私が数値解析に入門した頃、上のような背景から「いろいろなOS上で手軽に使えて、導入も簡単な解析ツールがあればいいな」と感じていました。ちょうどその頃、趣味で3D CGに関する処理を扱っていたので、その延長で、どこでも動く3Dグラフ描画プログラムを書いてみようと思いました。これが現在の「リニアングラフ3D」の原型となっています。
開発中に苦労した点
3Dグラフの大まかな処理をまとめると、
- ファイルからXYZ座標を読み込み、
- 拡大・縮小などの変換を行った上で、
- それを画面に描画する
という流れになります。描画部分に目が行きがちですが、実はここはそう難しくなく、3D CGの基礎知識があれば何とかなると思います。逆に一番苦労したのは、意外にも「ファイルからXYZ座標を読み込む」部分でした。というのも、グラフソフトは幅広い分野で使われるだけあって、さまざまなソフトやOS上で作られたファイルを想定しなければいけません。例えば、表計算ソフトからメモ帳にコピペされたものもあれば、別のOS上で数値計算プログラムから出力されたものもあるわけです。ファイルの中身も、数値の並び方や区切り方、改行コードなど、さまざまなパターンがありますし、冗長な空白・改行といった「クセ」もあります。さまざまなファイルに対応するには「ひたすらケースバイケースで拡張と検証を重ねてゆく」という地道な作業が必要で、なかなか大変でした。
ユーザにお勧めする使い方
インストール不要でどこでも動くので、USBメモリなどに入れておくと、外出先のパソコンでも使えて便利です。常用する場合は「bin」フォルダのパスを環境変数に登録しておくと、コマンドラインからも使えるのでお勧めです。
今後のバージョンアップ予定
オプションや対応ファイルの追加など、内部処理レベルでは今後も手を入れてゆくと思います。ただ、このソフトのような「作業用ソフト」では、使い慣れた操作感の変化を好まない方も多いため、画面デザインの大幅な刷新などは避け、なるべく数年後も違和感なく使えるような方向を目指しています。
とはいっても、最近はパソコンそのものが劇的に変化しつつあります。画面は急速に高解像度化が進み、タッチパネル操作の機会も増えてきました。数年後のパソコンがどのような形態や使い方に落ち着いているのか、ちょっと予想が難しい状況です。そうした新しいパソコンでも使いやすさを確保しつつ、旧来から違和感のない操作感を提供してゆくのが、今後のバージョンでの課題になると思います。
最後に
有名なグラフソフトがいくつもあった中で、ゼロから開発したグラフソフトを使っていただけて、何年もバージョンアップを重ねてこられたことは、本当にありがたいことだと思います。ご使用いただいている方々へ、心よりお礼申し上げます。
(松井 文宏)