いずれもココロに傷を持つキャラクタの内面が、四つの著名な童話になぞらえて描かれた“雰囲気のある”ゲーム。どの物語も大幅にアレンジされ、元の童話そのものではないが、オリジナルを知っていれば、さらに楽しめるだろう(どれも非常に有名な話のため、まず知っていると思う)。それとは別に、タイトルでもわかるように「不思議の国のアリス」などもモチーフとして取り入れられている。「ホラー風」と謳われてはいるが、ホラー的な要素はあまり強くない。作者のいうように「雰囲気程度」なので、ホラー作品は苦手な人でも安心してプレイできる。ゲームの難易度は、ただエンディングにたどり着くだけであれば高くない。7種類が用意されたエンディングのうち、六つまでは比較的簡単にたどり着くことができるだろう。一つは、ちょっと難しいかもしれない。
ただし、すべてのエンディングにたどり着いたからといって、「すべての重要なエピソードを見ているかどうかわからない」ところが「Alice mare」の難しいところ。物語の中で、少しだけ名前が出てくるキャラクタが登場するルートがあり、できればこれは絶対に見ていただきたい。そうすれば、はじめてこの物語の全容がスッと胸に落ちるだろう。
(秋山 俊)