ちょっと大げさな言い方をすると、今度の「ATOK」は、これまでのパソコンの日本語入力システムの常識を覆したかもしれない。日本語入力システムの仕事というのは、【Enter】キーを押して文字列を確定するまで、だった。ところが今度の「ATOK」では、文字列を確定したあとに、また変換候補が表示される。そこで終わりではなくなったのだ。こういう入力方法を私たちは知っている。携帯電話の入力だ。ケータイの日本語入力は、複雑な文章の入力には向いていないが、わりと決まりきった文章を打つには効率的で、場合によってはほとんど新規入力なしに、推測変換の候補だけでメールが書けてしまう。同じことをパソコンでもできるようにしたのが、新しい「ATOK」の推測変換だ。複雑な文章でも、定型的な文章でも、極力少ない打鍵で書けてしまう、ほとんど無敵の日本語入力システムに近づいているといったところだろうか。
ただ、この「確定後に推測変換候補が表示される」方法は、すべての人に向いているとは限らないし、特に慣れるまでは、確定後に変換ウィンドウが出現するのに違和感を感じる人もいるかもしれない。そのためかどうか、この機能は初期状態ではOFFになっている。使いたい場合は設定で有効にする必要がある。しかし、かなりおもしろい機能であることは間違いない。
(土屋 佳彦)