「Knight Night」には、個性的なキャラクタが数多く登場する。アドニスが仕える「バーンズ」は王様とは思えないくらいにわがまま言い放題だし、「ゲイル」や「ミカ」とのやり取りは漫才のよう。さらに旅の途中で出会う仲間「リュカ」「ナナリー」「ケイト」も、いろいろな意味で変わっている。ツンデレ魔王「キーファ」の一人ボケツッコミはたまに面倒くさくはなるものの、微笑ましい。そんな登場キャラのテンポのよい会話が「Knight Night」の魅力のひとつ。キャラクタ同士の会話は読みやすく、かつおもしろい。主要キャラクタだけでなく、モブキャラクタの台詞も凝っている。早く物語を進めたいと思っても、つい町のキャラクタ全員に声をかけてしまうことも多々あった。
しかし、個人的に最もおもしろかったのがアドニスの台詞。アドニスの台詞は二択形式で、プレイヤーが選ぶことができる。この選択肢がなかなか奮っていて、ゲーム冒頭でバーンズ王が「神降ろし」をする際の台詞が、「A:どういうことですか?」「B:さっさと神降ろしちまおうぜ!」の二択だったときは、迷わず「B」を選んでしまった。こういったちょっと毒をもった小ネタが、ゲーム中の随所に散りばめられている。
戦闘はところどころに強力な敵がいるが、基本的に難易度は低めに設定されている。エンカウント率が若干高いせいか、ボスにたどり着くまでにレベルが上がり、無用なレベル上げは必要ない。アドニスの魔法の使い方を間違えなければ、詰まることはまずないだろう。もちろん、きちんとレベルを上げながら進むと、ボス戦での苦労が少なくなるので、そこは自分に合ったプレイスタイルで遊んでいただきたい。
前半はコメディタッチでストーリーが進むが、後半になるとシリアスなシーンが増えてくる。前半に何気なく張られた伏線が後半に回収されるなど、きちんと計算されて作られている物語は、読んでいてとても楽しかった。特に後半に進むにつれて次第に明かされてゆくアドニスに関する謎は興味深く、どんどん物語に引き込まれてゆく。
王道のファンタジーRPGだが、ユニークなキャラクタがスパイスとなり、テンポよく読み進めてゆくことができる。中盤以降のストーリーは非常にアツく、後半になってくると止めるタイミングが難しいくらいゲームに没頭してしまう。より多くの人に、この秀逸なストーリーを楽しんでいただきたいと心から願う。
(早川 陽子)