指先ほどの小さなサイズに数GBのデータを記録できるUSBフラッシュメモリは、その手ごろな価格も相まって、もはや誰もが持っているデバイスになった。だが、ここまで小さくなると心配になるのが、紛失の危険性だ。落としても音などしないし、仮になくなっても、なかなかすぐには気づかない。大切な情報が失われる瞬間だ。情報が失われるだけならまだよい。もっと怖いのは、その情報が他人の手に渡ってしまうこと。「他人に知られて困る情報などない」という人ならいいだろうが、パソコンの中には電話帳やメール、各種文書など、プライベートな情報が入っていることもめずらしくない。それらを一度でもUSBメモリに入れたことがある人なら、「USBメモリのセキュリティ」の導入を検討するべきだ。
「データは毎回削除するから安心」かというと、そんなことはない。最近の優れたアンデリート(データ復元)ソフトを使えば、たとえ削除されて「一見」なくなったように見えるデータでも、持ち主である本人さえ驚くほどの古いデータを復元してくれる。これに対抗するには、データを暗号化するしかない。
最近は市販のUSBメモリも独自のセキュリティ機能を搭載しているものが増えてきた。しかし、ローコストな製品ではそんな機能は搭載していないものも多いし、仮に搭載していても、製品ごとに使い勝手が違ったりする。それらを使い分けるくらいなら、「USBメモリのセキュリティ」のようなソフトの方がむしろ便利だ。
業務での利用だけではなく、個人のデータであっても、他人に見られて困ることは意外に多い。プライバシーが重視される現代だからこそ、ぜひとも常用したいソフトだ。
(天野 司)