「マルチレンダリング」「作業平面」「スナップ」などの機能が追加・強化され、“過去最大ともいえる操作性の改善”が施された“定番”3D CGソフトの新バージョン。「Shade 10.5」は、立体を作る「モデリング」、リアルなイメージを描ける「レンダリング」、動画作成のための「アニメーション」の各機能が統合された3D CG作成ソフト。使いやすさと高いレンダリング品質で定評のある「Shade」シリーズの新バージョンで、前バージョン「Shade 10」のユーザインタフェースが改善されたほか、多数の新機能が追加された。「Shade 10」同様、プロフェッショナル・業務用の「Professional」、クリエイター向けの「Standard」、ホビー用の「Basic」の三つのグレードが用意されている(編集部注:以下の本文は「Professional」を中心にまとめられています)。
新バージョンで追加された機能のひとつが「作業平面」。従来のインタフェースでは、3Dオブジェクトを配置する際に基準となる「ワールド座標系」がひとつしかなく、XY/YZ/ZY平面に平行でない面上にオブジェクトを配置するのが難しかった。「10.5」では、すでに配置されているオブジェクトの面を「作業平面」として選択できるようになり、水平面や垂直面以外の平面に沿ったオブジェクトを容易に配置できるようになった。
より正確なモデリングを可能にしたのが「スナップ」だ。「Shade 10」で搭載されたスナップ機能を拡張し、「既存オブジェクトを囲むボックス(バウンダリーボックス)」に対するスナップだけでなく、個々のオブジェクトの頂点や稜線などにもスナップできるようになった。複雑な形状を組み合わせた場合でも、オブジェクト同士に不自然な隙間が生じることがなく、正確で美しいモデリングを行える。オブジェクト同士の組み合わせで生じてしまった開口部へも、多角形の蓋を簡単に被せることで対応できる。
レンダリング機能では、新たに「マルチパスレンダリング」が追加された。オブジェクトを3D CGとして画像化する際、通常であれば拡散光、環境光、ハイライト、シャドウといった複数の光源成分をすべて計算して合成するところを、合成を行わずに各成分を独立した画像として出力できる。出力された各成分の画像を(Adobe Photoshopなどの)レイヤ機能対応のレタッチソフトで合成すれば、従来の方法でレンダリングした結果と同様の画像を得ることができる。あとから合成する手間は必要だが、環境光やハイライト光を調整したい場合や各光源の割合を変化させたい場合でも、再レンダリングを行う必要はない。微妙な光の具合を確認・調整したい場合に便利だ。
同じくレンダリングでは、トゥーンレンダリングにおける「ハーフトーン」が強化された。従来バージョンでもモノクロドットパターンの疑似的なハーフトーンを作成できたが、「10.5」では、「ハーフトーン/カラーハーフトーン」機能で個々のドットサイズを可変にすることにより、より滑らかなグラデーションを作成できるようになった。また「線数指定」や「CMYKごとのスクリーン角度の個別指定」も行えるようになった。商業印刷を前提とした画像を作成できるほか、通常のグラフィック出力でも、ポップアート風の画像を作成できる。
出力形式では、インフォマティクス社の3Dペイントレンダリングソフト「Piranesi」で使われるEPix形式や、ソニー・コンピュータエンタテインメント アメリカ(SCEA)の提唱するCOLLADA形式に対応。COLLADA形式は、PLAYSTATION 3などでも使われており、ゲーム開発にも「Shade 10.5」を利用できるようになった。
「Shade 10」で取り入れられた「3Dマニピュレータ」や、4面図の自由選択、配置機能、時間のかかる計算を省略してレンダリングを高速化する「ドラフトレイトレーシング」機能は、「10.5」にももちろん搭載されている。髪の毛作成プラグイン「ヘアーサロン」で作成された髪の毛を一本一本正確にレンダリングする「ファーレンダリング」、Adobe Flash(SWF)形式での出力などの機能も従来通り搭載されている。