自分で育てた野菜を食べてみようと、5年前の秋、キャベツとダイコンの種を庭の片隅に蒔いてみました。直径1mmほどの小さな種からキャベツやダイコンができるはずがないと思いつつ、数ヵ月経つと、虫が食べて穴だらけのキャベツと、小さなダイコンの形をした物体(?)ができました。とても野菜とは呼べないようなものでしたが、自然の営みに感動し、来年からはスーパーで売っているようなあの野菜を作ってみようと決心しました。それから、本を読んだり、試行錯誤したりして、やっと野菜と呼べるようなものができるようになりました。
試行錯誤している間に三つの大事なことがあることに気がつきました。それは2W1H(WHEN/WHERE/HOW)――いつ種を蒔くか、どこに植えるか、どのようにして育てるか――です。
種を蒔く時期(WHEN)はとても大事です。エンドウマメのように1週間遅れたら、小さな苗は霜にやられて枯れてしまいます。逆に1週間早すぎても、大きくなりすぎて霜に遭うと弱ってしまい、実が成らなくなります。
また、場所(WHERE)も大事です。エンドウマメなどは一度植えると、5年間は同じ場所に植えられません。連作障害というアレです。花が咲き、「これからおいしいサヤエンドウが食べられるゾ!」と思った途端、全体が枯れはじめるアレです。また、どのように(HOW)水をやったり、肥料や農薬をやったりするかも大事です。うっかりしていると、ヨトウムシ(夜盗虫)が夜中に葉や茎を食い荒らします。
前置きが長くなりましたが、このように野菜を育てるには複雑でデリケートな問題がたくさんあるのに、野菜を育てたり、シミュレーションするためのソフトウェアはそれほど多くありません。否、「ほとんどない」といっていいくらいです。
連作障害が発生する年数は統計上、野菜ごとにほぼ把握できていますが、それをチェックする機能を持つソフトもほとんどありません。また、植え付け場所を記録したり、成長の記録や肥料の履歴や農薬の履歴を記録していくソフトもほとんどありません。せいぜい、ノートや日記帳にメモを取ったりする人がほとんどだと思います。
幸いにも、弊社のソフトの中に「棚割n@vi」という商品を陳列するソフトがありますが、これを流用して何とかならないかと思い立ちました。そのあと、何度も挫折をし、今回何とか製品化に漕ぎつけました。
このソフトは新しい分野なので、今後どのように発展してゆくのかはわかりません。あるいは、初版で終わりなのかもしれません。将来については何とも言えませんが、野菜作りをして土に触れ、心と体を健康に保つための一助となれば幸いです。
((有)久兼システム企画)