「今の風を感じて」は、一般的なRPGとは一線を画すユニークなシステムを採用した、「探す・見つける」がテーマのRPG。舞台設定は、レフィリア教会に属する導師・アレイドとティナが、帝国支配下のファーレーン地方の調査に出かけるというもの。はっきりとした目的を知らされていない調査行の中で、二人が出会う人々や数々の事件に、ティナの生い立ちを絡めた形でストーリーが進行していく。同じ作者による「IndeTerminatePLUS」の続編的外伝といった位置づけだが、前作をプレイしていなくても楽しめる。

大きな特徴は、キャラクタのレベルアップという概念がないこと。経験値やお金、武器防具といったものが「今の風を感じて」には存在しない。キャラの能力は、町を歩いているときやダンジョンで手に入れられるチップを、「HP」「MP」「術威力」「防御力」「敏捷性」といった要素に振り分けることで設定する。チップはストックしておくことができ、またいつでも新たに振り分け直すことができる。チップの数が多いほど能力値は高くなるが、決まり切ったレベルアップの段階を踏むのではなく、持っているチップの数や戦闘相手に応じて、自在にキャラを作り上げられるようになっている。

もうひとつの特徴が、戦闘システムの「先行入力」と「全情報の常時表示」。「今の風を感じて」では、先に行動を決めておき、「行動ゲージ」がいっぱいになったところで実際の行動に移るという順序になる。同時に敵の次の行動や行動ゲージが常に表示されているので、相手が仕掛けてくる攻撃や行動ゲージの値を見ながら、プレイヤーキャラの行動を決めていける。闇雲に戦うのではなく、より戦略的なプレイを楽しめるシステムとなっている。

わかりにくい言い方になってしまうが、ゲームにスピード感がある。そしてこれは、この「今の風を感じて」独自の、チップによるシステムと大いに関係しているように思う。RPGの中には、マップ上を移動しているだけで意味もなく敵と遭遇し、戦闘をはじめなければならないというものがある。経験値を上げてレベルアップを図るために仕方がないこととはいえ、ある意味で退屈なこうした戦闘が、ゲームのスピード感を削いでしまう面は否めない。その点、「今の風を感じて」の戦闘はすべてイベント戦闘であり、数も絞られていて、ゲームの流れを阻害しない。戦闘自体も、やはり独自の先行入力システムによって戦略が要求されるので、退屈することがない。

このゲームは、RPG好きな人だけでなく、上記のような理由で「もうひとつRPGに興味を持てなかった人」にプレイしてもらいたい。誰にでも楽しめるというよりむしろ、そういった人にこそ楽しんでもらえるゲームだと思う。

【辺境紳士（グラフィック担当）】　この作品では各所に表示されるグラフィックと、その演出プロットを担当しています。自分の専門とは20度ほど方向が違う畑だけに、興味も強かったもので……制作を通じて技量向上を図るというのが、第二の動機でした。ヒデさんが手がけた前作＆前々作に惚れ込んだというのが第一の動機。半ば無理を言って名乗り出させていただいています（笑）。

開発中に苦労した点
【ヒデ（企画・制作担当）】　システム的に「RPGツクール2000」の枠を越えて制作しているのですが……。一番苦労したのは物語の構成です。登場人物の性格や思考、役割や関わり……。考えれば考えるほど混乱してしてしまって、まとめるのに苦労しました。

【辺境紳士（グラフィック担当）】　当然のごとく、質と量の追求に苦労しました。ゲームに使用するという前提でイラストを制作したのは初めてでしたが、勝手知ったる世界観かどうか……通して、楽しく作業を完遂できたと思います。アマチュアのゲーム制作においては、多分これが最良の原動力でしょうね。

ユーザにお勧めする使い方
【ヒデ（企画・制作担当）】　ゲームのシステム上、「チップ探し」はとても重要なウェイトを占めています。これを怠るとクリア不可能に陥る可能性もあります。どうしても勝てない敵にぶち当たった場合の抜け道として「Easyモード」を用意しましたが、このモードでは「チップの欠片（経験値）」が得られません。なるべく「Normalモード」で戦闘をするのが望ましいです（防御に重点をおくと勝てるようになることが多々あります）。
※サイト上にて『完全攻略情報』も掲載しています

今後のバージョンアップ予定
【ヒデ（企画・制作担当）】　バージョンアップは特にないのですが、現在「天使の微笑」という、また一風変わったRPGを再び辺境紳士さんとともに制作中です。こちらは完成しましたら、Vectorにてシェアウェアで安価にて公開予定です。

【辺境紳士（グラフィック担当）】　絵に関しては、半年ほど時が経つと、粗もいろいろ見えてくるのもまた事実ですが、そのあたりは（無理やり）除外するとして……。恐らく、数年後に（絵の）バージョンアップをしたくなる可能性は高いと思われます（笑）。この作品で培った経験は、間違いなく次回作に生きてくるでしょう。