情報処理技術者試験センターが行っている国家試験「初級システムアドミニストレータ(初級シスアド)」の試験問題を学習できるソフト。「パプリカ!」は、初級シスアド試験で出題される問題をクイズ形式で楽しく学べるソフト。ストーリー仕立てになっており、飽きずにプレイできるのが特徴だ。初級シスアドを簡単に説明すると、「パソコン利用と情報処理における基礎分野の知識を問う」試験。パソコン関連はもちろん、「企業での具体的な運用」「セキュリティ」「分析手法」などの幅広い知識が求められる。試験は「午前」「午後」の2部構成で、直近の2006年秋期試験では午前に基礎知識80問が、午後に応用問題7問が出題された。「パプリカ!」では、「午前」の部で頻繁に出題される基本問題が出題される。
主役を務めるのは、とある商業高校の情報処理科に所属している「パプリカ」と「あんず」の二人。パプリカたちは、初級シスアド試験に合格するため日々勉強を重ねている。そんなある日、彼女たちが通っている学校のパソコン室から、実体化したウイルスが出現する事件が発生。パプリカが参考書を振り回してウイルスを追い払うと、そこにはなぜか「シスアド関連のクイズ」が収録されたCD-ROMが転がっていて……、というのが物語の導入部だ。
「パプリカ!」には「バトル」「クイズ」の二つのモードが用意されており、両者を交互に繰り返すことでストーリーが進む。「バトル」はウイルスと戦うモードで、「パプリカ」と「あんず」のどちらを戦闘で用いるか選択する。キャラごとに能力が若干異なり、パプリカは「攻撃力」「HP」の値が有利で、あんずは「気合」の値が有利。どちらを選んでもストーリーが変わるわけではないので、好みで選択してかまわない。
バトル時のコマンドは「攻撃する」「防御する」「気合で何とかする」の三つ。「気合で何とかする」は、使用するごとに「気合」の値が減るが、強力な必殺技や能力強化技がランダムで発動する。ただし、バトルモードはおまけのようなもので、「気合で何とかする」を連打していれば簡単に勝ててしまうほどの難易度。クイズモードの合間の息抜きとして考えるとよいだろう。
「クイズ」は、モード1回につき10問が出題される。出題方法はランダムではなく、常に決まった問題が出題される。解答は4択方式で、実際の試験と同じ形となっている。解答後、正解/不正解にかかわらず各選択肢の解説が示される。なお、何問不正解であっても途中でゲームオーバーになることはない。
先にも述べた通り、問題の範囲は非常に幅広い。「情報処理試験」と銘打たれているシスアドだが、その特徴はパソコンやネットワークなどの知識だけでは合格できないところにある。特に社会経験の少ない学生にとって、会社や簿記などの基礎知識を問われるような問題は難しいだろう。「パプリカ!」は、そうした知識を付けたい人にとっても有効だ。
筆者も10年ほど前にシスアド試験(筆者が受験した当時は「初級」「上級」の区別がなく単に「シスアド」という区分だった)に合格しているが、恥ずかしながら全問正解はおぼつかない。当時は分厚い参考書を使って学習していたが、あのとき「パプリカ!」があればもっと楽しく学習できただろうに……と思う。
イラストやストーリーに独特の趣きがあり、「パプリカ」や「あんず」のキャラがコミカルに描かれていて、よく練られていると感じる。一方で難点もあり、バトルモードの存在意義が希薄に感じられてしまう点は残念。無理にバトルモードを入れず、クイズモードの幕間はパプリカたちの掛け合いを描くだけでもよかったのではないだろうか。
とはいえ、数ある初級シスアドの学習ソフトにおいて、ここまで敷居を下げた――万人に受け入れられやすい――ソフトもめずらしい。次回の春期試験を狙っている方はもちろん、すでに合格している方や、試験に興味はないがパソコンは詳しいと自負する方など、多くの方に試してもらいたいソフトだ。
(田中 剛健)