ミサ曲第6番変ホ長調 D.950 全曲
シューベルト最後のミサ曲です。最晩年の1828年(31才)に作曲されました。
ミサ曲6番は、どういう経過で書かれたかはっきりしないようですが、「傑作の森」のなかの作品にふさわしく内容の濃い内面的な祈りと叫びに満ちた曲だと思います。はじめて聴いた高校生の頃ふるえの止まらない感動をしたことを覚えています。ことに終曲の「アニュス・デイ」は、当時空恐ろしい音楽だと感じたものでした。神をたたえるなどというきれい事など微塵も感じられず、神の喉元に迫っていく人間的な訴えの音楽に思えたのです。個々の歌手が目立つことなく合唱主体に進んでいく曲の作り方はその感を深くさせてくれます。不安と緊張と痛みと祈り・願いの音楽です。また、「アニュス・デイ」は、同時期の歌曲集「白鳥の歌」の13曲目「影法師(ドゥッペルゲンガー)」ととてもよく似た世界を感じます。