「ラスト・ピュリファイ」の物語は、まったく異なる二つの価値観を持つ人間の視点で語られる。概ね「徹から見た東京の人々や風景」が描かれるが、ごくたまに竜二の視点に移行して、竜二の目から見た徹の姿が綴られる。この世界では、戦争の火種になるという理由で、暴力や宗教、娯楽文化の一切が排除され、感情・自我を抑圧するという「世界倫理機関」の主張が正義とされている。いま現在、我々が当たり前のようにしている行動──笑ったり、泣いたり、楽しんだりすること──は「悪」なのだ。永久的な非武装・平等・世界平和を理想に掲げる機関が、武器を手に刃向かう東京を暴力によって制圧しようとする。この矛盾に満ちた戦争に疑問を抱きながらも、東京の人々は自由を得るために戦い続ける。そんな泥臭い人間ドラマが綴られてゆく。
よく出てくるフレーズが「徹はロボットだから」。ロボットのように感情を抑制された主人公が、竜二や淳、夏樹、そして戦いで兄を亡くした過去を持つ「琴莉」と交流することで、それまでの自分の生き方に疑問を抱くようになる。「ロボット」だった主人公が「人間」らしさを取り戻してゆく過程が、非常に丁寧に描かれていた。
筆者がお気に入りのポイントが二つある。ひとつはジャーナリストを目指す少女・琴莉の雑学ネタ。東京の地名や歴史など、さまざまな小ネタを披露してくれるのだが、結構知らなかったことが多く、思わず感心して読み込んでしまった。もうひとつが徹の過去について。ゲームの随所に挿入される、徹が過去に見た風景。まるでミステリーのようになっており、それら一つひとつのピースが繋がることによって、ひとつの真実が見えてくる。
基本的に一本道のストーリーだが、一度エンディングを見た状態で再びゲームをはじめると、1周目には登場しなかった選択肢が出てくる。この選択によっては、1周目とは異なるエンディングを見ることができる。ぜひ、隅から隅まで味わい、真実にたどり着いてほしい。
(早川 陽子)